年金制度は、具体的にどうヤバいのか?詳しく解説

年金 10年後の日本

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2019年5月22日に、金融庁が配布した資料の内容が「これから年金は厳しくなってくるから、それぞれ各人で頑張ってほしい」というメッセージが入っており、かなり大きな反響がありました。

おそらく現役世代なら、「どうせ自分たちは、まともな年金ももらえないだろう」と薄々は感じていたとは思うのですが、国の機関が正式に「やばいです」と認めたことで、あらためて落胆した人も多かったのではないでしょうか?

 

ですが、今回話題となっている金融庁の配布資料である、

「 事務局説明資料(「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案))

参考資料

を見てみても、書かれていることは「日本人の寿命が延びているから、年金だけに頼るのは難しい」ということだけで、「具体的にどうヤバいのか?」が書かれていませんでした。

 

そこで、この記事では、現在の年金制度について、

  • 収支はどうなっているのか?
  • 積立金はどうなっているのか?
  • これから何が起こるのか?

の3点を解説していきます。

 

収支はどうなっているのか?

日本の年金制度は「賦課(ふか)方式」と言って、今払っている人の保険料から年金受給者に支払われる仕組みとなっています。

そのため、今払っているからと言って、今後年金財政がおかしくなってくれば、「払った分すらもらえない」という可能性もあります。

 

では、実際のところ、その収支はどのようになっているのでしょうか?

「国民年金勘定」「厚生年金勘定」「基礎年金勘定」に入ってくる保険料(国庫負担分を含む)と支払っている給付費を調べてみたところ、このような結果となりました。

 

運用益を除くと、マイナスが続いている

*収入:国民年金・厚生年金の保険料と国庫負担分

*支出:国民年金・厚生年金・基礎年金の給付費

 

年金の収支

(参考:厚生労働省 年金特別会計)

 

実は、毎年の年金の収支は、平成10年ごろからマイナスが続いているんですね。

そのため、積立金も平成10年以降はほぼ横ばいとなり、リーマンショックがあった2007年以降では大きく目減りした時期もありました。

 

ただし、この数年はアベノミクス効果もあり、株価も上昇しているため、積立金は増加傾向にあります。

 

年金積立金は、アベノミクス以降は増加傾向に

年金の資産推移

(参考:厚生労働省 公的年金の積立金運用)

 

そのため、毎年の年金収支はマイナスですが、積立金の運用益でなんとか維持できているというのが現状です。

 

しかし、今後はさらに年金受給者が増えますので、保険料や税金だけではすでに赤字の状況ですから、さらに赤字が拡大していきます。

 

つまり、今後も年金制度を維持するには、

  • 年金受給者の年金を減らす
  • 資産運用による利益を増やす(もっと株価を上げる)
  • 年金保険料や税金をあげる

の3つの方法を駆使する必要があるのです。

 

これから何が起こるのか?

保険料と税金で集めたお金だけでは、現在支払っている年金額に満たないのが現状であり、年金制度が保つかどうかは、積立金の運用益次第という状況です。

では、この積立金は、どのような資産で運用されているのでしょうか?

 

安定的な国債運用から、株式や外債へシフト

年金資産の運用内訳

(参考:厚生労働省 公的年金の積立金運用)

 

2013年4月から始まった日銀の異次元緩和政策によって、日銀が年金運用していた国債もどんどん買い取ってしまったため、国内株式、外国株式、外国債券の比率が急上昇しているのが現状です。

 

これがやばい理由は2つあります。

 

(1)年金と日銀が大企業の大株主になっていて、売るに売れない

アベノミクスが始まってすでに6年目に入っていますが、この間に日経平均株価が上がってきたのは、アメリカを中心とした株式市場の上昇があったからだと思われていますが、その実態は、

  • 日銀がお金を刷って株を買ってきたから
  • 年金が株を買ってきたから

の2点がとても大きいです。

 

これの何がやばいのかというと、実際に換金して売ろうとした時に、値段が大きく下がってしまう可能性があることです。

 

例えば、2019年3月末現在の東証1部の時価総額は約608兆円ですが、年金が保有する国内株式は約38兆円となりますから、6%以上を年金が保有している計算になります。

また、日銀がETF(上場投資信託)を通じて保有している国内株式は、約24兆円になります。

(参考:日経新聞 「日銀、ETF残高3割増 18年度 緩和縮小に備え引当金増」)

 

つまり、年金と日銀とで、日本の大企業の株式の1割以上を保有しているのです。

日本の高齢者はこれからもっと増えていきますから、今後は資産を売却して年金給付金に充てる可能性が高まります。

 

しかし、年金が売却するとなれば、数兆円単位となります。

現在の年金資産は時価評価では上がっているものの、今後の換金のための売却によって、大きく毀損する可能性が高いのです。

 

(2)日銀の異次元緩和は、いつまでも続けられない

さらにもう1つの問題は、日銀の異次元緩和政策はずっと続けられないという点です。

異次元緩和政策とは、日銀がお金を刷って、国債や株を買って資産価格を上げようとする政策です。

 

この政策によって、金利が低下し、株価が大きく上昇しました。

そのため、現在の不動産バブルや株価バブルが演出されており、富裕層や住宅ローンを組みたい人を中心に恩恵を受けています。

 

ですが、この政策によって、銀行が儲からなくなっています。

現在50以上の地方銀行が赤字に転落しています。その理由は、金利がつかないため、お金を貸しても、国債で運用しても儲からないからです。

 

そのため、10年後には地銀の6割が赤字に陥ると予想されています。

(参考:日経新聞 「地銀の6割、10年後赤字 日銀試算『再編も選択肢』」 )

 

また、日銀はお金を刷って国債や株式を買っていますが、なぜこんなことをしても経済が混乱しないかというと、そうやって買った資産はいずれ売却してお金を回収するつもりだからです。

つまり、現在日銀が保有している24兆円の株式は、いずれ売却をされる資産なのです。

 

もちろん、一気に売却することはありませんが、金額が金額なので、一度売却すると決めたら、数年単位で売り続けることになりますので、株価は大きく下落する可能性が高いです。

その時に、年金積立金は、思っている以上に値下がりしている可能性があるのです。

 

結論

というわけで、日本の年金制度についてまとめると、

  • 毎年の保険料+税金だけでは、年金給付金に足りない
  • 資産運用によって赤字分を補填しているが、その多くが国債から株式へとシフトしている
  • 日銀の異次元緩和によって株高が進み、年金資産が大きく上昇している(ように見える)
  • ただし、異次元緩和はいずれ縮小するため、今後は株価の下落が予想される。その時までにインフレが進んでいなければ、年金積立金は大きく減る可能性が高い

ということになります。

 

そのため、なるべく年金に頼らずに、長く働くことができる職種や企業を選ぶことが重要になってきます。

終身雇用制度もこれから本格的に崩壊へと向かいますので、他社でも通用するスキルを身につけられる企業への就職・転職を考えていく時期ですね。

 

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